大判例

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東京高等裁判所 昭和28年(ラ)356号 決定

よつて按ずるに、相手方が抗告人に対する東京地方裁判所八王子支部昭和二十七年(ヨ)第一六六号仮処分事件の仮処分決定に基く執行をなし、抗告人がこれに対して異議の申立をなした結果(同庁同年(モ)第一七四号事件)同裁判所支部が昭和二十八年二月十七日判決言渡をしたので、抗告人において右判決の確定証明を得た上前記仮処分の執行行為の取消を申し立て、右委任を受けた執行吏が右執行を取り消したところ、更に相手方の申出により執行吏代理小龜孝が右取消執行行為を再び原状に回復する執行行為をなしたことは当事者間に争がなく、成立に争のない甲第一、二号証同第三号証の一、二の各記載によれば、昭和二十七年九月六日附でなされた前記第一六六号仮処分決定は、債権者たる相手方に金五万円の保証を立てさせた上、「一、同決定添附目録記載の不動産のうち東京都北多摩郡調布町国領字染地千三百九十九番の二原野五畝十三歩に対する債務者(抗告人)の占有を解いて債権者の委任した東京地方裁判所八王子支部執行吏にその保管を命ずる。執行吏はその現状を変更しないことを条件として債務者にその使用を許さなければならない。但しこの場合においては執行吏はその保管に係ることを公示するため適当の方法をとるべし、債務者はこの占有を他人に移転しまたは占有名義を変更してはならない。二、前示物件を除くその余の目録記載の物件に対しては債務者の立入を禁止する。この場合において執行吏はその旨を公示するため適当の方法をとるべし。」との趣旨のものであつたこと。然るに前記判決においては、右仮処分決定をそのまま認可せず、その主文は「当裁判所が昭和二十七年(ヨ)第一六六号不動産仮処分決定申請事件につき昭和二十七年九月六日なした仮処分決定を債務者の別紙目録記載の土地に対する占有を解いて債権者の委任した東京地方裁判所八王子支部執行吏にその保管を命ずる。執行吏はその現状を変更しないことを条件として債務者にその使用を許さなければならない。但しこの場合において執行吏はその保管に係ることを公示するため適当の方法をとるべく、債務者はこの占有を他人に移転し、または占有名義を変更してはならないと変更し、債権者が本判決送達後七日内に更に金十五万円の保証をたてることを条件としてこれを認可する。訴訟費用はこれを二分し、その一を債権者にその一を債務者のそれぞれ負担とする。」というのであつたこと、債務者(抗告人)は右判決につき確定証明を得たので、右保証金の供託がなかつたことの証明を得た上同裁判所支部執行吏に委任して昭和二十八年三月十七日前記仮処分の執行を取り消したこと、然るに「右判決に対しては債権者(相手方)代理人から控訴の申立があつたため未確定であり確定証明を出したのは誤りであつた」旨を前記裁判所が証明したので、相手方は右証明書を同裁判所支部執行吏木村直広代理小龜孝に提出し、前記仮処分の執行をその原状に回復せられたい旨を申し出たので、右執行吏代理小龜孝は同月二十七日更に前記仮処分の現場に臨み、山下幸次外一名の立会を以て前記のように取り消した仮処分の執行を原状に回復し、新たにさきに施したと同趣旨の公示書を板に記載したものを前同様仮処分土地の稍々南寄中央に立てて仮処分の執行を保持し、且つこの執行手続をなした旨を関係人に口頭を以て告知したことが認められる。右の事実から推察すれば、右現状回復執行は執行代理小龜孝において、前記判決が確定していなかつたことが証明された以上これが確定したものとしてなした取消執行が不当であるから、更にこれを取り消して現状に回復することができるという見解の下になされたものであろうが、前記判決が客観的には未確定ではあつても、右判決に基き前記仮処分執行の取消をなす当時においては、形式の上において確定判決に基くものとして取消の執行処分がなされたものであるから、債権者(相手方)において再び前記仮処分の原状に回復する執行をなさんとする場合には、その旨の執行を命ずる裁判を得ることを要するものであつて、執行吏代理小龜孝が相手方の申出により既に説示したような裁判所の証明書のみによつてその原状回復執行行為をなしたことは違法であるといわなければならない。

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